水封式真空ポンプ
水封式真空ポンプは、ポンプヘッド内に封水と呼ばれる水を入れ、インペラーの遠心力で水のリングを作ることにより、ポンプヘッド内に真空状態を生み出すポンプです。
液体を含んだガスの吸引に使用することができ、プラスチックの再生工場や窓枠成形の押出機、プラスチック成型の押出機、または医療現場での滅菌装置や食品業界では撹拌充填など広い分野で使用されています。
スペック社ではこの水封式真空ポンプを長年の間、開発・製造を行い続け、ヨーロッパでは医療業界・飲料業界・樹脂窓枠メーカーなどを中心に幅広い分野で使用されています。
水封式真空ポンプの稼働原理
水封式真空ポンプで重要になってくるのはポンプ内に入れる封水と呼ばれる液体です。上図のようにポンプヘッド内の封水がインペラーの回転と共に水のリングを三日月状に形成します。
この水のリングが容積式ポンプのように、ポンプ内に入ってくるガスを吸い込み、圧縮し、吐き出すという一連の動作を担います。ガスはinlet opening(吸入口)から入り、圧縮され、outlet opening(吐き出し口)から吐き出されます。
また水封式真空ポンプには既にこの封水が使われていますので、水分を含むガスも吸引・排出することができます。例えば、プラスチック成型に使われる押出機などに水封式真空ポンプは使われていますが、プラスチック原料に含まれる水分も一緒に吸引するため、水封式真空ポンプが使われます。
稼動に原理に戻りますと、インペラーが回転するとケーシング内に水のリングを形成します。この水のリングとインペラーの間の面積は常に変化します。これは容積式ポンプの原理と同じです。ここでの水はガスを押し出すピストンのような役割を果たし、インペラー間の空間はそれを包む型のような役割をします。吸入口から入ったガスは圧縮されて、排出口より押し出されます。これが水封式真空ポンプの稼働原理です。
電流値と封水量
ユーザーA: ”3台あるうち1台の真空ポンプだけ、真空が引けなくなった。電流値も通常は30Aくらいいくのに、この1台だけは10Aまでしか上がらない。どうしたらいいか?”
【答え】電流値が上がらない→封水がしっかり回しきれていないということ→封水が少なくなっているので、インペラーが一生懸命回っても空回り状態になってしまっている→だから電流値も上がらないし、真空も引けない
※水封式真空ポンプは、封水が作る水のリングが対象の空気を吸引し排出する役割を持つ。封水が少なくなれば、この役割ができなくなる。
【解決方法】真空ポンプに封水を送る配管内のストレイナー(フィルター)を調べてみたらサビが溜まっていた。そのサビを取り除いてみると封水がしっかり真空ポンプに入り、インペラーが封水をしっかり回すようになり、電流値もアップ。真空も引けるようになった。
バルブフラップ構造-水封式真空ポンプの性能を高真空時にも低真空時にも最適に保つ
フラップバルブ構造は水封式真空ポンプにおいて真空ポンプの性能を高真空時・低真空時のどちらでも最適に出せるようにするための排気口です。固定式の排出口とは異なり、その時の真空度に応じて排出口を調整するので、常に真空ポンプが最適な能力を発揮することができます。
■フラップバルブの役割
外部(インターケーシング-接続間)との気圧差を利用して、吐き出し口を状況によって大きくしたり、小さくすることで真空ポンプのパフォーマンスを最適に保つ役割をします。
・固定の排出口(outlet opening)しかなければ、高真空時(内部のガスが圧縮されている状態)ではそこまで排気される空気はないので、真空ポンプのパフォーマンス性能に影響はないが、低真空時(内部のガスが圧縮されていない状態)では排気されるべき空気も多いのに、対する吐き出し口が小さいため、パフォーマンス性能に悪影響が出てしまいます。
・反対に吐き出し口が大きくなれば、排気口が大きくなるため低真空時の排気パフォーマンスは良くなるが、これでは高真空に到達しなくなります。なぜならガスを圧縮するまでの時間が掛かりすぎて、吐き出しが早く始まってしまうからです。
・そこでこのフラップバルブ部の可変吐き出し口をつける事で、もし外部(ケーシング-接続間)のガス圧縮が終了していなければ、ポンプ内部の気圧は外部(ケーシング-接続間)よりも低くなりフラップバルブは閉まります。→ポンプは高真空度に達する事ができパフォーマンス性能も問題ありません。
・もし外部のガス圧縮が終わっていれば、フラップバルブは開いています。なぜなら、内部の気圧は外部よりも高くなっているためです。→内部は低真空度になっており、排気もしっかりします。常に最適な性能パフォーマンスが保たれます。
封水の給水
水封式真空ポンプはポンプヘッド内の水がシールの役割を果たし、吸引したガスを圧縮・排気しているため、この封水の温度というものが重要になってきます。スペック社水封式真空ポンプではこの封水の温度を15℃以下に保つように推奨しています。
何もしなければガスの圧縮を繰り返すこの封水の温度は上がり続け、水封式真空ポンプの性能に悪影響が出るからです。具体的には、最高到達真空度が落ち、ガスの排気量も下がってしまいます。常に封水の温度が上昇していないか、15℃以上に上がっていないかをチェックすることが水封式真空ポンプでは重要です。
封水温度を15℃以下に保つには主に下記の3つの方法があります。
①常時、温度の上がった封水は外に排出して捨て、新しい水を供給し続ける
→常に新しい水を供給し続けるので確実に冷えた封水を使う事はできますが、大量の水を使うことになります。
②外に排出した封水の一部は、新しい水と一緒に再利用する
→封水を再利用しているので節水にはなりますが、冷える温度は小さくなります。
③外に排出した封水は、熱交換器を通して再度冷却をして、再びポンプヘッド内に入れる
→供給水を節水しつつ、水温も確実に15℃以下に抑えるにはこの方法になりますが、封水を冷やすための熱交換器が必要になります。
水封式真空ポンプの性能曲線(真空度と排気量の関係)
水封式真空ポンプは内部の空気スペースの大きさが吸い込める排気量の大きさになっています。
つまり封水に対する空気スペースが大きければ排気量は多くなりますし(900mbarの低真空時)
反対に空気スペースが小さければ排気量は少なくなります(33mbar―高真空時)。
例えば、真空ポンプが吸い始めの最初の時間は吸い込む対象物にたくさん空気があるために自然と排気量も大きくなります。この状態は900mbar→200mbarの途中です。上図の性能曲線のようにガス排気量(ガスを吸い込む量)は多いです。真空ポンプがたくさん吸い込んでいるので、ポンプ中の空気スペースも大きいですが、それも徐々に対象物から吸い込める量も減っていき、やがてヘッド内のスペースのほとんどが封水が占める割合になる頃には、ガスを吸い込む量が減って来ます。これと同時に空気のスペースも減ってくるためポンプ中の真空度も下がってきます。そして吸い終わりの終盤(=高真空度時 33mbar)では、ほぼ対象物から吸い込める空気量もなくなるので必然的にポンプ中の空気スペースも小さくなります。つまり封水の面積が増えている状態です。封水の蒸気圧分の圧力が残りますが、ぎりぎりまで高真空に近づいていきます。
BluVac真空ポンプシステムではこのガスの吸引量が減ったこのタイミングで回転数を下げることで省エネを行います。ほとんど吸い込むガスがなくなった状態であるため、頑張ってインペラーを回して空気のスペースを作る必要がありません。インペラーの回転数を下げて求められる真空度を保つだけで十分です。
水封式真空ポンプの排気量調整方法
①吸い込み側から追加の空気を入れて真空度と排気量を調整する
これは最も頻度の高い水封式真空ポンプの調整方法です。水封式真空ポンプでは、対象物からどんどんガスを吸引して行けば、最後にはガスが対象物に残らない状態になり、水封式真空ポンプ自体も、最高真空度に達してしまいます。これよりもやや真空度を落としたいという時には、外部より追加の空気を水封式真空ポンプ内に入れてあげることでポンプの稼動点を動かすことができます。
②吸い込み側の弁を閉める事でガス排気量を調整する
あまり実践的ではありませんが、吸い込み側の弁を閉める事で、ダイレクトにガスの吸引量を落とす方法もあります。しかしこの方法はあまり実用では使われません。急激な真空圧の変化により吸い込み量が減ってしまう点と、キャビテーションの原因になるからです。
水封式真空ポンプ性能曲線の読み方
真空ポンプの能力は到達圧力(mbar)と排気速度(m3/h)で決まります。大気圧より低い圧力状態にするには、密閉容器中の空気を真空ポンプで排気すれば実現できます。必要な圧力(真空度)が決まれば、その圧力に達する時間と必要な排気速度を決めます。
液体ポンプの能力の見方は流量(l/m)と圧力(m)で見ていくのに対し、ガスを吸引・排気する水封式真空ポンプはQガス排気量(m3/h)と到達真空度(mbar)で見ます。スペック社の水封式真空ポンプの能力曲線では、縦軸にQガス排気量(m3/h)、横軸に到達真空度(mbar)です。
ガス排気量は時間内にどれだけの体積のガスを吸引し、排気したかという数値で分かりやすいです。到達真空度とは少し分かりにくいかもしれませんが、要はその水封式真空ポンプがどの程度までポンプ内の圧力を減らしたのかの数値です。
下の水封式真空ポンプの最高到達真空度は33mbar です。国内ではmbar よりも kPa(キロパスカル)の表示が良く見られます。ちなみに33mbar = 3.3kPa です。(1mbar = 0.1 KPa)
このポンプは最高で33mbarの到達真空度ですが、標準気圧=1013 mbar から考えると
1013mbar – 33mbar = 980mbar 分の圧力を減らす事のできるポンプと言う事ができます。
その33mbarの縦軸に当たる部分がその時のガス排気量となり、33mbar 時で言えば 100(m3/h)であったり150(m3/h)になります。
性能曲線の中には -50kPa (= -500mbar) のようにマイナスで表示されているグラフもありますが、これはそのまま50kPa分の圧力を減らすという意味になりますので、実際のポンプ内の圧力は標準気圧下で考えると
1013mbar – 500mbar = 613 mbar となります。
真空ポンプの能力が落ちるということ
真空ポンプの能力が落ちるという事は、下図のように排気速度(m3/h)が落ちるという事です。真空ポンプの排気速度が落ちれば、決められた時間の中で十分な排気ができなくなり、いつまでたっても到達真空度に達することができません。そんな時には、①封水の温度が上がっていないか、②封水は十分にヘッド内に供給できているか、このようなことを確認します。
真空度の読み方
真空度を計測するための圧力計として真空計があります。
大気圧下(1気圧下)で0MPを指し、そこから徐々に真空ポンプで真空にしていく事で、最大で絶対真空度である0.1MPaを指します。下図の0.05MPaを指している場合は、真空ポンプで0.05MPa(=500mbar=50kPa)分の圧力を減らしたという事です。
水封式真空ポンプの能力調整方法
水封式真空ポンプにおいてバルブ弁での調整は正確に行えますが、とにかく電気が無駄になりますし、ガス排気量は不必要に絞られます。
より効率的により安価な形での1つの解決方法は、真空ポンプ側の排気パワー自体を調整してしまう事です。その調整方法には①VFDで回転数を調整すること ②水封式真空ポンプを並列に使用すること です。
①水封式真空ポンプの回転数を変えて、真空度と排気量を調整する
モーターの回転数を変えれば、水封式真空ポンプの性能も変わります。50Hz回転数から40Hz、35Hzと落としていけば、下図のように真空度とガス排気量は落ちていきます。水封式真空ポンプではこのようなインバーターによる回転数制御はほとんど行われず、省エネが行われていませんでしたが、回転数を落としても問題ない使用点を把握できれば、大きな省エネにつながります。これを実現したのがインバーター使用水封式真空ポンプであるBluLineです。
②水封式真空ポンプを並列に運転する
水封式真空ポンプを並列に並べて使用することの利点は、真空圧の急激な変化を起こさずに平坦な状態でガス排気を行える点にあります。あるポンプは運転状態にして、あるポンプは停止状態にするという形です。システムが稼動中に真空圧の変動が起きた際にこの方法は効果を発揮します。あるポンプを停止状態にするのです。省エネにも繋がります。
真空度の安定・不安定
水封式真空ポンプにおいて真空度が安定して変化するか、不安定な状態で変化するかというのは大事にポイントです。上でも書きましたが吸い込み口のバルブを絞るという真空ポンプの調整方法もありますが、その場合に急激に真空度が下がるので真空度が不安定になり、キャビテーションを起こしやすくなります。
また二次側のプロセスでも急激にガス排気量が減ったり真空度が変わったりすれば、成型などに影響が出ます。真空度の上げ下げが安定した状態で変えられるのが良い水封式真空ポンプと言えます。
水封式真空ポンプのキャビテーション防止
水封式真空ポンプにはキャビテーション防止用の口がヘッドカバー面に付いています。例えば、医療機器用の滅菌装置などに水封式真空ポンプは使われているのですが、その際に真空ポンプ100℃オーバーのスチームを吸いこんだりします。それに対しポンプ内の封水温度はは15℃周辺の冷水です。かつ、ポンプ内は真空に近い状態までガスを排気していますので、封水が蒸発しようとする力を抑え込むための圧力がありません。封水温度が少し上がっただけでキャビテーション(沸騰)が起こりやすい環境にあります。
キャビテーションが起これば、メカニカルシール(漏れ)・インターケーシング(クリアランスが少し狂うだけでも真空が立たなくなる)にダメージが怒ります。キャビテーション防止口から空気をヘッド内に戻す事で、ヘッド内のキャビテーションを防ぎます。
つまり滅菌機用の真空ポンプは最初からせき込みながら、ガスを吸引しているもような状態で、キャビテーションと隣り合わせの状態です。
故に1年に1度はケーシングやメカシの交換が必要なのです。
Uc キャビテーション防止口:キャビテーションを防止するためのポート。ULを使用していれば使用してなくても良い。
UL 通気口 : 要求の真空度に調整するために追加エアーを供給するためのポート。キャビテーション防止にも利用できる。
Ub 封水供給口:水封式真空ポンプの【吸い込み→圧縮→吐き出し】の原理を作る水を供給するためのポート。
Uv ポンプ半分までの封水口:上記の封水はポンプヘッド半分まで水で満たす。このポートはその半分までにするための排水ポート。
Ue ポンプ全体の排水口:ポンプ全体から水を抜くためのポート
飽和蒸気圧とNPSHR
ポンプのNPSHRを考える際に忘れてはいけない指標が媒体の飽和蒸気圧です。何故ならNPSHRとはポンプがキャビテーション(沸騰)を起こさずに問題なく稼動できるための最低限必要な押し込み圧と言えるので、液体そのものの飽和蒸気圧すなわちその液体が何℃のときに気体になり沸騰してしまうかを見るのは重要なのです。
水封式真空ポンプでもこの水の飽和蒸気圧、そしてキャビテーションという概念は大事なポイントになってきます。何故ならポンプヘッド内は大気圧0.1MPaから徐々に減圧され、真空0MPaに近づくというプロセスが真空ポンプ内では起こっているからです。通常の大気圧下0.1MPaでは、下の蒸気圧曲線のように20℃の水が沸騰することはありません。大気圧0.1MPaで抑えられているためです。しかし真空ポンプヘッド内では0.1MPaが0.05MPaに、そして水20℃の蒸気圧である0.0025MPa(≒25mbar)まで下がっていくと、水は20℃という温度ながら沸騰(キャビテーション)を起こします。つまりここが最高到達真空度です。
実際にはこの0.0025MPa(≒25mbar)から余裕を取り0.0033MPa(≒33mbar)がスペック水封式真空ポンプの最高到達真空度になります。
メンテナンス
スペック社 水封式真空ポンプVIシリーズはカバーを開けるとインペラーを取り外せる構造になっています。
通常のVシリーズなどは、まずインターケーシングがあり、ケーシングを取ってその先に固定されているインペラーを外さなくてはなりませんが、VIシリーズはフリーインペラーのため工具を使わずにインペラー・インターケーシングを取り外せます。
ドライガスの吸引と飽和蒸気ガスの吸引の比較
水封式真空ポンプを扱っていますと、吸引するガスにドライガス(水分をほとんど含んでいないガス)と飽和蒸気ガス(水分を多く含むガス)の2つに分けられます。下記の水封式真空ポンプの能力曲線を見ますと、飽和蒸気ガスの方が多く吸気・排気出来る事が分かります。
これはポンプ内で行なう、吸引・圧縮・排気の圧縮の部分で飽和蒸気ガスはドライガスよりもよりガスを圧縮でき、多くのガスを運送できるためです。
水封式真空ポンプでの正しい配管方法
水封式真空ポンプでは、通常の真空ポンプとは異なり吸引ガスに多量の水分を含んでいる場合がありますので、吸い込み側の配管はポンプに対して押し込みの形にならなくてはなりません。
更に吐出し側においても、まっすぐに次のセパレーターに向けて配管される必要があります。そうしなければ、水分のみが配管の底に留まり、ガス部分のみが排出され続け、吐き出しと吸引が不安定になってしまいます。
大排気量向けダブルインペラー水封式真空ポンプ
スペック真空ポンプで言えばVZシリーズにあたるダブルインペラー(2枚のインペラー使用)タイプは、下記のV-55(シングルインペラー)と比較しても分かりますが、高真空度時(100mbar以下)での排気量が大きいです。これは1枚のインペラーで行う、吸気→圧縮→排気 というプロセスを2枚のインペラーで2段階で行う事で、より多くのガスを圧縮できるためです。
より高真空を得るためのガスエジェクター
水封式真空ポンプでは下記に示すガスエジェクタークターを吸い込み側の接続口に付けるケースがあります。ガスエジェクターの構造は吸い込んできたガスに対して、外部からの大気ガスを駆動ガスとし吸引し噴射させることで、吸い込みガスが低圧の高速状態で真空ポンプに入ります。こうする事で真空ポンプが到達できる最高真空度よりも高い高真空度が得られます。
封水温度が与える真空ポンプのパフォーマンス
封水の温度は水封式真空ポンプのパフォーマンスにダイレクトに影響します。ユーザーからも”最近、真空度が上がらない”というご相談を受けますと、”封水温度が高くなっていませんか?”と聞いたりします。封水温度が高くなれば飽和蒸気圧曲線にもあるようにそれだけキャビテーションに近づくため、真空ポンプとしての性能は落ちます。真空ポンプの性能を100%で発揮したいならば、封水温度を15℃に留めておくことが必要です。
下記は15℃を1とした場合に、温度上昇につれどれだけ到達真空度が下がるかを表した図
ガスに含む水分量と水封式真空ポンプのパフォーマンス
大流量の水を吸い込んでもパフォーマンスや故障が起きないVNシリーズポンプ
水封式真空ポンプの特徴は水分を含むガスを吸引・吐出し・輸送できる点にありますが、この水分量が多すぎるとポンプのパフォーマンスに影響が出ます。簡単に言えば、水分量が多すぎるとポンプのパフォーマンスが落ちます。またポンプの消費電力も落ちます。ポンプ内の水が多くなればそれを回すインペラーの仕事量も多くなり消費電力は上がり、吸引できるガスのスペースも減るためです。
下記に示すVNシリーズポンプは水処理量が最大10 m3/hの水分を多く含むガスに適したポンプですが、VNポンプでも4m3/hの水を処理するケースでは下図のように排気量と消費電力の性能に多少の影響を与えます。これが通常の水封式真空ポンプになると更に大きなパフォーマンス悪化の影響を与えます。扱うガスの水分量と水封式真空ポンプの特性を把握する事が大事なのはこのためです。
- 吸引可能な水処理量
- ガスの吸引能力を示す排気量
- メンテナンスのしやすさ
この3点を高水準で兼ね備えたオールラウンダー水封式真空ポンプです。このVシリーズがスペック社の水封式真空ポンプの全てのスタンダードになります。
VIシリーズは 特に 3 メンテナンスのしやすさ に力を入れている水封式真空ポンプです。インペラーが固定式ではないフリータイプのため、厄介なクリアランス調整が必要ありません。全ての水封式真空ポンプの中で最もメンテナンス性に特化した製品です。また水封を作り出すための封水の量もVシリーズの半分で足りる節水型の水封式真空ポンプです。 但し、水処理用と排気量はVシリーズに劣ります。
VNシリーズは特に 1、吸引可能な水処理量 に特化した水封式真空ポンプ です。Vシリーズの約2倍の水を吸引・処理する事ができます。その秘密はスペック社が特許を取得したポートシリンダーにあります。これにより、最大10m3/h の水を処理する事ができるのです。水をたくさん含んだガスを処理するにはこちらのVNシリーズをお勧めします。また、排気量もVシリーズと同等です。但し、最高到達真空度はVシリーズよりも劣ります。
左の図にもありますように、VN型ポンプは他の水封式真空ポンプに比べて許容できる水量が大きいのが特徴です。
VGシリーズは食品工場で問題となるポンプヘッド内のスケールの溜まりを解消した水封式真空ポンプです。ポンプヘッド前面のデッドスペースをなくしフラットな面にする事で食品の吸引で用いる際の汚れの溜まりを起こりにくくします。 3.メンテナンスのしやすさ に特化した水封式真空ポンプです。水処理能力もVシリーズよりも高く、ガス排気量もVシリーズと同等です。但し、最高到達真空度はVシリーズよりも劣ります。
スペック水封式真空ポンプの最新モデルがこのVHCシリーズです。二段式インペラーの構造により、より大きなガスの吸引が可能です。大排気量に付き物であったクロスパイプを取り除くことに成功しよりコンパクトなサイズになっています。またヘッド内のインターケーシングもステンレス標準で、真空度の低下を招く錆にも強い構造になっています。