媒体ごとに異なる比熱

比熱とはその物質の単位質量を1℃上昇させるのに必要な熱量を指します。

例えば水の比熱は 4.186[kJ/kg・K]です。これは1kgの水の温度を1℃上昇させるのに4.18kJの熱量が必要という意味です。鉄の比熱は、0.444[kJ/kg・K]で、1kgの鉄の温度を1℃上昇させるのに0.44kJの熱量が必要という意味です。

 

比熱はダムに例えると分かりやすく、

比熱が高い(1 kJ/kg・K 以上・例えば水)ということは大きなダムの場合で、

・熱を入れても、温度という水位はなかなか上がらない(熱しにくい)

・熱を抜いても、温度という水位はなかなか減らない(冷めにくい)

 

比熱が低い(1 kJ/kg・K 以下・例えば金属)ということは小さなダムの場合で、

・熱を入れると、温度という水位はすぐに上がる(熱しやすい)

・熱を抜くと、温度という水位はすぐに減る(冷めやすい)

鉄は熱しやすく冷めやすいです。つまり比熱が小さい媒体は熱しやすくまた冷めやすい媒体で、比熱が大きい媒体は熱しにくく、また冷めにくい媒体と言えます。

 

 

ガルデンやフロリナート(FC3283)の媒体比熱は1.0 kJ/kg・Kあたりで水(4.187kJ/kg・K) と比べて比熱が小さいです。どちらかと言えばフッ素系媒体は鉄のように冷めやすく熱しやすい媒体と言えます。この冷めやすく熱しやすいというフッ素系媒体の特徴は冷凍という気化熱(媒体が液体から気体に蒸発するときに周囲の熱を奪う現象)を利用したプロセスにぴったりの特徴です。

 

 

気化熱で冷やす冷媒チラー

 

 

気化熱と呼ばれる“液体が気体に変化する際に周囲の熱を奪う現象”を利用するのがチラーの特徴です。その際の媒体はフッ素媒体のように比熱は小さく冷めやすい特徴の方が望ましいでしょう。

 

 

 

上のチラー構造で凝縮器という部分があります。コンデンサーとも言い、蒸発器(エバポレーター)で気体になった冷媒をコンデンサーで加圧した後に、空気または冷水と熱交換させる事で、気体を液体に凝縮液化させるための機械です。この凝縮という現象の際に気体は周囲に熱を発します。これを凝縮熱と言います。

 

 

 

凝縮器と蒸発器はそれぞれ下記のような形をしています。

 

 

 

膨張弁は凝縮器から出てくる高温・高圧の液体冷媒を、次の蒸発器で気化しやすい(蒸発しやすい)状態にするために、低温・低圧の霧状に減圧するための弁です。膨張弁には感温筒と呼ばれる蒸発器出口の温度を検知する部分があり、蒸発器出口の温度が低ければ膨張弁に入ってくる冷媒量を抑えるために弁を閉じます。反対に出口の温度が高ければ、膨張弁に入る冷媒量を上げるために弁が開きます。膨張弁に入る冷媒は狭い通路を通ることで流量が下がり、流速が上がり、そして減圧されます。

 

 

コンプレッサーは気体を圧縮し、高圧にするための機械です。

凝縮熱を利用して温水を作る蒸気温水装置

また気化熱を利用して冷媒液体が熱を奪う冷凍チラーとは反対に、凝縮熱を利用して高温蒸気が液体になる過程で熱を放出し、常温水を温水に変えるボイラーを使った蒸気式温水装置などもあります。

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