インバーターを使うとなぜポンプは省エネになるのでしょうか。通常のポンプは流量や圧力を調整するときも、モーターは常に100%の力で回転しています。どんなに流量がいらなくても、またどんなに圧力がいらなくてもモーターは100%の力で回転するため、結局は吐き出しバルブを絞るか開くかして、エネルギーをバルブ部分で意図的にロスさせてコントロールしなくてはなりません。これに対してインバーターを使用したポンプの場合、モーターの回転速度を自由に変えることができます。つまりモーターを100%の力で回転させてもいいし、50%や30%の回転数に落として使用しても良いのです。これによってモーターの消費電力を落とすことができます。インバーターによってポンプは必要な分だけの流量・圧力にすることができます。
【インバーターがモーター周波数を変える原理】
【電源からブレーカー、インバーター、モーターを繋ぐ順番】
インバーターで出来る機能
インバーターはモーターを動かしたり、回転数を変えたりすための制御盤のようなものではなく、単品で利用できる電気製品。モーターの回転数を変える以外にも、以下のような事ができます。 (参照文献:楽勝!現場で使うインバータ)
- モーターの始動器
- モーターの故障を察知・保護する機能・・モーターの過電流・低電圧などモーターの異常を察知し、ストール防止機能を作動させる。
- モーターの状態を表示する機能・・運転中の電流値・回転数・電圧などを表示
- インバーター本体用の電源・・インバーターには直流24Vをつくる装置が入っており、交流電源とモーターの間にインバーターを付けるだけで、モーターを運転できる。
インバーターの問題3つ
①発熱がある→冷却が必要なのでファンが必要(また冷却のためのスペースも必要)
②ノイズを発生する→スイッチングを持つ装置は必ずノイズを発生させ、他の装置に誤作動を起こさせる。
③高調波→交流を直流に変換させる際に波のずれが起こる。このずれを直す進相コンデンサーがあれば必ず外す。一次側電源のショートを起こす危険性がある。
インバーターのV/F制御
参照:Vacon20 マニュアル
インバーターはモーターの回転数を変える際に、モーターの電圧値も変えています。上図のように、周波数を上げれば比例して電圧も上げていきます。その時のV/fの値は一定になります。 仮に電圧を一定のままで周波数だけを上げ下げすると、モーターの焼損につながります。このインバーターの特性をV/f特性と呼びます。
例えばここに下記のようなポンプがあるとします。
・ポンプの最大回転数 4000rpm
・モーターの最大回転数 6000rpm
・モーター定格電圧 298V
日本国内の工場の使用電圧は200Vなので上記の定格298Vが一見すると高すぎるように感じます。しかしポンプの最大回転数は4000rpmですので
4000rpm/6000rpm x 298V ≒200V になります。
回転数が下がった分だけ、電圧も下がることになります。
インバーターのトラブル事例
①エラー表示:低電圧(電圧降下)
ある装置に入っているPMモーターポンプや他機器3台を稼働させると、2~3分後に低電圧のエラーが表示されポンプが停止ししてしまう。3台ではなく1台だけで運転すると(冷凍機・コンプレッサーなどはオフにする)エラーは出ずにそのまま運転できる。この事から、他の機器とポンプを組みあせて使用すると、初期稼働で電圧降下が起きる事があり、低電圧エラーになる。
②漏れ電流エラー
Vaconインバーターでは4.0kw以上において、インバーターからの漏れ電流が多すぎて、漏電ブレーカーに引っかかてしまうことがある。その時は盤を開けてジャンパー2つを抜くと、インバーターのEMCレベルが落ちる代わりに、漏れ電流も下がり解決することがある。
③モーターの回転数が上がらない
インバーター上で周波数をいくら上げても、なぜかモーターの回転数は5Hz付近をうろうろしている現象がよく見られます。これはまず、インバーターが取りにいく先のパラメーター値がインバーター上ではなく、preset speed 0のような初期設定値になっている事。更にこの初期設定値がパラメーターで5Hzに設定されている事が上げられる。つまり、インバーターが取りに行く先が盤上の値ではなく、かつその取りに行く先が5Hzに設定されていることが原因。
スペックPMモーターポンプの自動回転数減速機能
インバーターにはモーターが定格電流値を超えた場合の保護機能(アラーム設定)などがありますが、スペックPMモーターはモーターが回転数を上げて定格電流値を超えようとすると、インバーターが定格電流値を超えないように自動的に減速する機能が付いています。これにより、モーターが定格を超えて焼損するというトラブルを事前に防ぎます。
PMモーター設定/誘導モーター設定
スペックポンプ使用のVacon社製インバーターはPMモーター・誘導モーターの両モーターに使用できますが、その切り替え方法はパラメーター設定で行います。インバーターの機種によっては誘導モーター専用のインバーター、PMモーター専用のインバーターとありますので確認が必要です。
Vaconインバーターの基本動作(ローカル制御:VFDキーパッド上)
まずは【基本の電源→インバーター→ポンプ】の接続についてです。
L1 L2 L3部に電源からのケーブルを接続します。 UVW部にはモーターに繋がるケーブルを繋ぎます。この時、スペックPMモーター上の端子内部では、U→茶色ケーブル V→黒色ケーブル W→青色ケーブルになるように接続する必要があります。
これがVaconインバーター上の操作ボタンです。
下記の緑ボタンでモーターがスタートし、赤色ボタンで停止します。
バックボタンを押すと、左のPAR(パラメーター)・MON(モニター)・REF(リファレンス)の各メニューを選ぶ事ができます。回転数(周波数)を変えたい場合は、REF(リファレンス)に↑ボタンで合わせて、周波数を大きくします。
MON(モニター)メニューにカーソルを合わせると、現在のモーターのデータ(電圧・回転数・周波数など)が分かります。
Vaconインバーター外部コントロール用の端子接続
【デジタル入力】VFDにデジタル信号を送り起動する
■6番端子:24V電源 DI1用(最初のスタート)
■8番端子:DI1 正転スタート または 9番端子:DI2 逆転スタート
以上の6番端子、8番端子または9番端子には必ず端子接続します。これでIO制御でポンプをスタートさせる事ができます。
多段速設定をする場合は
14番 15番 16番の DI4 DI5 DI6 端子(デジタル入力)も使用します。
次は外部制御で周波数を変えるための端子についてです。
【アナログ入力】VFDにアナログ信号(0-20mA/0-10V)を送り回転数を変える
■4番端子:アナログ入力AI2 0-20mA / 0-10V
※AI2 アナログ入力をmA→Vに変えたい場合は下記のつまみを変える
■5番端子: GND アース
最後にエラー機能を起こすためのリレー端子です。
【リレー出力】VFDの保護機能が動作し、出力を停止するための端子
■25番端子:R21(リレーアウト)
■24番端子:R22(リレーアウト)
【a接点】 何か起こったら信号を送ってONにする 例)運転中に20Hzを超えたらRO1が接続しエラー表示を出す。20Hzを再び下回れば、接続は離れる。
【b接点】何か起こったら信号を送ってOFFにする 例)どこかのケーブルが抜けたら(接続が離れたら)エラーが出る
他にも下記のような端子があります
AO【アナログ出力】VFDからPLCにVFDの出力周波数などを送る
送信方法として、0-10V また 4-20mA があります。 ■モニター例 出力周波数・出力電流・出力電圧・負荷率・消費電力・速度回転数
DO【デジタル出力/ オープンコレクター】
メカニカル式のリレー出力ではチャタリング(摩耗)の誤作動が起きる場合がありますが、デジタル出力(オープンコレクタ)ではトランジスタを使用した出力になるためそのような問題が起こりません。デジタル出力/オープンコレクターにはDO-(シンクタイプ)とDO+ (ソースタイプ)があります。
■モニター例 周波数到達・パターン運転・低電流検出など
使用方法としては例えば運転周波数の監視などがあります。例えばVFDの周波数が50Hzを超えた時を監視してそれに応じてPLCを通じてチラーの冷却能力を落としたい場合、このデジタル出力(オープンコレクター)を使います。50Hzを超えたらチラー能力を落とすというようなやり方です。
下のP8.1パラメーターはデジタル出力つまりPLCに出力するための項目ですが
12=出力周波数の監視 を設定すれば、端子5=GND / 端子13=DO common を使用し
P12.1→ 2=上限 P12.2 → 50Hz で設定すれば 50Hzを周波数が超えた際に、VFDからデジタル出力を通してPLCに信号が送られる。
そして端子20 DO【デジタル出力/オープンコレクター】を使用する
Vaconインバーターのパラメーター説明
P1.X モーター設定
P1.Xパラメーターには、インバーターが動かすPMポンプのデータが入っています。定格電圧・定格電流・モーター力率・U/Fパターンなどモーターに必要な全ての情報がこのP1.Xパラメーターに入ります。スペックPMポンプの全てのパラメーター設定はドイツ工場出荷時に行われますので、基本はそこからパラメーター変更を行う事はありませんが、特にこのモーターデータに関するP1.Xについては変更せずに確認するに留めます。
P2.X スタート/ストップ・ローカル/リモート制御
P3.X 周波数(回転数)設定
P2.Xはインバーターの制御をVFD本体(Local)で行うか、それとも離れた制御盤上で行うか(Remote)を設定するパラメーターです。P2.1 /P2.5のパラメーターでローカルモードかリモートモードかを選択します。例えば離れた制御盤(Remote)で運転したい場合は、P2.1=0(I/O) P2.5=0(Remote)にして、VFD上の画面もそのようになっているかを確認します。
P3.Xについては多段速設定(予め、数個の回転数(周波数)を設定しポンプを動かす制御)において使用します。P3.3=1(preset speed=0)とし、P3.4 preset speed0の回転数(周波数)を設定します。これだけで起動後にモーターはこのpreset speed0の回転数まで上がります。
同じくP3.5~P3.11までpreset speed 1 ~ preset speed 7までの周波数を設定すれば、下図のP5.8 P5.9 P5.10 の設定においてそれぞれ下記のように端子を接続すれば、スピード0/1/2の3段階の回転数を設定する事ができます。
P5.1はデジタル入力の割り振りとなり、1=DI1にすればP3.4で決めたpreset speed0までモーターは回転数を上げる。
P5.8 preset speed B0=4(DI4)
P5.9 preset speed B1=5(DI5)
P5.10 preset speed B2=6(DI6)
P4.X 加速/減速時間
インバーターでは到達回転数までの時間を設定することができます(パラメーターP4.2)。これは粘度が高い媒体などを扱う場合に、時間をかけて徐々に回転数を上げる事で、モーターへの負荷を抑えることが目的です。しかし、あまりにも長い加速時間を取るとエラーが起こる場合もあるので注意が必要です。
P5.X 多段速スピード設定
上記でも述べた多段速設定を行う場合に、P5.Xパラメーターを使います。あらかじめ設定した周波数を最大8個用意することができます。
P13.X 保護機能
P13.Xはモーターの保護機能です。スペックPMモーターは定格電流値を超えようとすると、自動的に減速し電流値を下げる設定になっていますので、通常のインバーター-誘導モーターで使われるようなストール保護機能は必要ありません。
試験的にアラーム機能を出したいという場合は
P13.5 アラーム設定を1(警告出し)
P13.11 ストール保護電流値(ストール保護機能が作動する電流値)
P13.12 ストール時間(何秒以上でストールが掛かるか)
P13.13 ストール周波数(ストールが作動する最低周波数)
以上の4つをセットします。
Vacon Live モニタリングメニュー
PC上のVFDパラメーター設定ツールであるVacon LiveではモニタリングメニューがありVFDと接続している稼動ポンプの回転数や電流値などをリアルタイムで記録することができます。
インバーターサイズ
インバーターの制御方法
①インバーター本体の操作パネルで制御する方法
② インバーターの制御端子に配線して外部の制御パネルで運転する外部運転モード
インバーター内蔵のPID制御機能を使った運転
③ PLCやVFDをRS-485通信 / オプション基盤装着 でネットワーク構築し制御
※PLCとは自動的に外部の機器を制御できる機器のことを言います。シーケンサはPLCの別称です。PLCはコンピューターのようなもので自動的に運転させるプログラムを書き込めます。
※RS485やオプション基盤とはネットワーク通信の事を指し、PLCやVFDなどの機器を1つのネットワークにして制御させます
※インバーターにはPID制御が内臓されており、運転状況により速度、圧力、流量などを制御できる簡易な自動プログラムが使えるようになっている