カスケード(渦流タービン)タイプと渦巻きタイプ
カスケード型(渦流タービン) マグネットポンプ 製品ラインナップページ
マグネットポンプというのは媒体を完全に密閉しながら、磁力の力でインペラー部を回転させる事で媒体を輸送するポンプの構造になります。
マグネットポンプ構造を使ったポンプの中では更に大きく分けて2つの遠心ポンプである カスケード(渦流タービン)ポンプタイプと渦巻きポンプタイプに分けることができます。
カスケード(渦流タービン)インペラーの高圧力に特化した特徴
スペックポンプのあらゆる特徴はこのカスケード(渦流タービン)インペラーをポンプに採用しているところから始まります。
カスケード(渦流タービン)インペラーは通常、ポンプ業界で呼ばれているポンプである渦巻きインペラーとは異なり、200l/m以下の小流量ながらも高い圧力を出す事に特化したインペラーです。この高圧力を生み出すことができるカスケード(渦流タービン)インペラーという形がシステム抵抗値の高くなった複雑な回路にもしっかりと流量を流す事ができる要因になります。
渦巻きインペラーでもインペラーを何枚も重ねる多段型にすれば高圧力を出すことは可能ですが、コストが増すのと故障を起こした際のメンテナンスの手間を考えると最適なソリューションとは言えません。しかしカスケードインペラーならば、容積式ポンプと非容積式ポンプの間のようなその特徴により、ある程度の流量を高い圧力で流すことが可能です。
また渦巻きインペラー1枚で何とか希望の稼動点を出そうとしますと、必然的にインペラーサイズとモーターサイズが大きくなり、ポンプが巨大化してしまう難点があります。
”スペックポンプは他社製品よりもコンパクトなのに圧力がしっかり出る”という評価をよく頂きますが、これはカスケードインペラーを採用し高圧力を生み出すために特化したポンプにしているためです。
性能曲線の傾きが強いカスケード(渦流タービン)インペラーは小さいモーターサイズでも高い圧力を出す事ができるのに対して、曲線の傾きがほぼ平行である渦巻ポンプはインペラーサイズを大きくしないと(モーターサイズを大きくしないと)一定の圧力を出すことができません。必然的に渦巻ポンプで稼動点を出したいとなった場合はポンプサイズが大きくなっていきます。
カスケード(渦流タービン)ポンプは容積式ポンプ(プランジャーポンプ)と非容積式ポンプ(渦巻きポンプ)の両方の特徴を持つポンプ
カスケード(渦流タービン)ポンプの能力の特徴は先ほど説明した通り、小流量(200 l/m以下)ながら高圧力を出せるところにあります。
このカスケード(渦流タービン)ポンプの能力の特徴はプランジャーポンプやギアポンプなどのインペラーとケーシング間のクリアランスがない容積式ポンプの特徴(どこまでも高い圧力を出す)と渦巻きポンプなどのインペラーとケーシング間のクリアランスが十分にある非容積式ポンプの特徴(大きい流量が出せる)の間を取った特徴と言えます。
実際のそれぞれのポンプ内部の構造を見てみますと
まずギアポンプ・プランジャーポンプなどの容積式ポンプでは【吸い込み→圧縮→吐き出し】というプロセスを経て圧力を高めていくので、下図のようにインペラーとケーシング間のクリアランスはありません。
容積型ポンプ:ギアポンプの断面図
渦巻きポンプでは下図のようにインペラーとケーシング間のクリアランスは十分にあり、液体がケーシング内で循環できるような構造になっています。
非容積式ポンプ:渦巻きポンプの断面図
カスケード(渦流タービン)ポンプはカテゴリーとしては非容積式ポンプになりますが、インペラーとケーシング間のクリアランスは非常に狭く、またインペラー自体に小さいVaneという突起物が無数に付いています。この小さい部屋が容積式ポンプのように高い圧力を密閉空間で高めながら吐き出し口に向かいます。
カスケード(渦流タービン)ポンプ
日本国内ではポンプと言えば渦巻きポンプと言うほどに、渦巻き型インペラーを採用した渦巻きポンプが主流になっていますが、条件によっては低流量(200 l/m)以下だけれども高い圧力(0.5MPa以上)が必要といった場合に選択肢として上がってくるのが、スペックポンプが主に採用しているカスケード(渦流タービン)型インペラーのポンプになります。
スペックポンプの評価として”小型サイズながら圧力がでる”というお言葉を頂きますが、ポンプの構造自体がカスケード(渦流タービン)型インペラーを採用しているので、”低流量だが高圧力を出せる” つまり 小型サイズながら圧力が出せるのです。
カスケード(渦流タービン)ポンプの仕組み
カスケード(渦流タービン)ポンプの形はポンプヘッド部が平でフラットな形であることが特徴的です。渦巻きポンプのヘッド部は丸いお椀のような形をしています。この形の違いはそれぞれのポンプが持つ性能的特徴の違いによるものです。
カスケード(渦流タービン)ポンプではバルブを絞ると圧力がどんどん高まっていきます。その性能曲線は渦巻きポンプに比べて傾斜が強いです。また弁を絞る程に圧力が高まるため、締め切り運転に近くなるほどに圧力は上がります。よってカスケード(渦流タービン)ポンプの始動時は弁を開放して起動する事で電流値を抑えて運転します。
カスケード(渦流タービン)ポンプの性能的特徴は、小流量で高圧力を生み出せるポンプです。渦巻きポンプの特徴は大流量で低圧力を生み出すポンプです。よってカスケード(渦流タービン)タイプのポンプの性能曲線は、圧力を縦に流量を横に取ったグラフの場合、縦の傾きが強い上記のようなグラフになります。
カスケード(渦流タービン)ポンプで使われているインペラー羽根には無数のvaneと呼ばれる小さい突起物が付いています。吸い込み口から入った液体はポンプ内壁に沿って、この無数のVaneによって生み出される強力な渦によって繰り返し加圧されることで、吐き出し口から出るまでに高い圧力を生み出します。インペラーとケーシングの間の溝の深さは狭く、1つ1つの突起物がこの狭い溝の間に無数の渦流を起こして、一周する間にどんどん圧力を高めるのです。
スペック社のカスケード(渦流タービン)ポンプは1台1台がテーラーメード
カスケード(渦流タービン)ポンプの能力(流量・圧力)はポンプヘッド内にあるインペラーのサイズにより決まります。インペラーの厚みが増せば流量は上がり、インペラーの直径が大きくなれば圧力は増します。スペック社のカスケードポンプは、ユーザーの使用稼動点を聞いてから、ジャストなインペラーを制作します。これにより、要求能力より過大なポンプが出来上がったりする事はなく、最も価格とエネルギー効率の良いポンプを選定する事ができます。
ポンプ性能曲線の読み方
ポンプの性能曲線には、流量と圧力の2つが示されています。詳細なデータでは、その際の軸動力(モーター消費電力)・NPSHR必要吸込みヘッド・ポンプ効率なども記されています。この性能曲線はあくまでポンプ単体が行う仕事を示しています。ポンプの先にあるバルブ弁によって失われる圧力などは含まれていません。ポンプが作り出す圧力、ポンプが送り出す流量がこの性能曲線には記されています。
ただしこの性能曲線だけではポンプの稼働点は決まりません。ポンプの稼働点(圧力・流量)を決めるのは、ポンプの先にあるシステムが持つ抵抗値です。システム抵抗値の曲線との交点により、ポンプの稼働点が1点に決まります。システム内のバルブを閉めることによりシステム抵抗値が上がれば、その曲線は左に寄ります。すると、ポンプの稼働点は流量が下がり、圧力が高くなる交点に移動します。反対にバルブを開放すれば、システム曲線は右に寄り、流量が上がり圧力は下がる交点に移動します。
ポンプの稼働点を決めるのはポンプ自身ではありません。ポンプは常に与えられた回転数で100%で仕事を行うだけです。そのポンプの先のシステム抵抗が、ポンプの稼働点を決定しています。
ポンプ流量・電流値とシステム抵抗値の関係
ここではスペックポンプ主力製品のカスケード(渦流タービン)インペラータイプのポンプを元に説明します。カスケード(渦流タービン)タイプのポンプは渦巻型インペラーのポンプとは異なり、流量を上げるほど(バルブを開けるほど)に電流値は下がっていきます。反対にバルブやシステム抵抗値の上昇により流量が絞られるほどに電流値は上がっていきます。
先程も説明しましたが、ポンプのパフォーマンスはポンプ自身が決めるのではなくポンプが組み込まれているシステム回路全体の抵抗値によって決められます。例えば上の図では、バルブや熱交換器を通る配管などがポンプが流そうとする仕事に対しての抵抗になります。
バルブや熱交換器などの数が増えるほどに回路全体のシステム抵抗値は上がりますので、その分だけポンプは十分な圧力を持って媒体を送り出さなければ十分な流量を熱交換器などに送りこむことができません。
例えば上のグラフにある黄緑色の曲線が回路のシステム抵抗値を示します。この曲線とポンプの性能曲線である赤い直線(流量と圧力)が交差する点がポンプの稼動点に決まります。ここでは黄色い点の【42 l/m at 22m】というのが稼動点です。そしてその時の電流値は青い直線との交点である【5.3A】付近になります。
そしてシステム抵抗値が増す、つまりバルブや熱交換器が増えたり、配管が細いものになったりL字型エルボが増えたりすると、回路全体のシステム抵抗値は増します。下の図のように黄緑色のシステム抵抗値の曲線は左側へ傾きの強い曲線に変わります。
システム抵抗値が増す要因
・バルブや熱交換器などの流量の抵抗になるものが増える
・配管が細くなる
・L字型のパイプ部分が増える
何らかの要因でシステム抵抗値が増すと上の図のように曲線は傾きの強い左側に寄ったものに変わります。ここで注目したいのがポンプの出す流量とその時の電流値の関係です。回路の抵抗が増えたので当然ポンプが媒体を流しにくい状況になっています。
具体的に数値で見るとシステム抵抗曲線と赤いポンプ性能曲線が交わる黄色い点がポンプの稼動点になり、【25l/m at 30m】になります。先程と同じ回転数のポンプであるにも関わらず、【42 l/m at 22m】→【25l/m at 30m】へと流量は減りました。(圧力は抵抗が増えたぶん上がっています。) その時の電流値は【5.6A】です。システム抵抗が上がる前は5.3Aでしたので、電流値もシステム抵抗値の上昇と共に上がっています。つまり、回路全体がポンプにとって媒体を流しにくい状態に変わったのでポンプが出す流量は減り、またその時の電流値は上がったのです。
実際の現場ではシステム回路に流量計のみを取り付ける場合が多いですが(圧力計は付けないケース)、流量とその時の電流値のデータを取る事ができれば、そこから大体のポンプが出す圧力を求める事が可能です。
流量計も圧力計も取り付けていないというケースではあまり正確ではありませんがポンプの性能曲線と稼動中のポンプの電流値を取る事ができればその時の大体のポンプの稼動点(流量と圧力)を性能曲線から予測することもできます。電流値が定格ギリギリの値になっているとするならば、システム抵抗値とポンプ性能曲線の交点がかなり左側に寄っているという事ですので、流量はかなり絞られていると考えられます。またポンプの仕事量がかなり大きい状態とも言えます。システムの抵抗値がかなり大きい状態です。
反対にその時の電流値が低い状態を示しているならば、交点は右側に寄っているという事ですので、流量は十分に出ていると考えられます。ポンプの仕事量は適正と言えるでしょう。システム抵抗値も小さい状態です。
しかしケースによっては電流値だけを見て判断を誤ってしまう事もあります。例えばポンプ内に異物が挟まっている場合、モーターへの負荷は高くなり電流値はかなり上がっているでしょう。これはシステム抵抗値が大きいのではなくポンプ自体に問題がある状態です。反対に電流値が極端に低い場合にポンプの流量はかなり出ていると考えたいですが、空運転というインペラ部に流体がない状態、流体に空気が混じっている状態では電流値は低い状態になります。この状態のときには流量は出ていませんので電流値だけで判断することができません。
ここではあくまでカスケードタイプでのインペラーの説明です。渦巻型インペラーの場合は消費電力の動きが反対になりますので注意してください。
カスケード(渦流タービン)インペラー(圧力型):流量が絞られるほどに消費電力(電流値)は上がっていく。そのためスタート時はバルブ全開にして消費電力を抑えてスタートさせる。
渦巻きインペラー(流量型):流量が出る程に消費電力(電流値)は上がっていく。そのためスタート時はバルブを絞る閉塞運転で消費電力を抑えてスタートさせる。
なぜこのような違いが起きるのかと言うと、カスケード(渦流タービン)インペラータイプはその構造上、密閉された圧力がどんどん上がるような構造になっています。反対に渦巻型インペラーはケーシング内は開通しており圧力よりも流量が多く出るための構造になっています。
ポンプ吐き出し口とバルブによる圧損の見方
ポンプの性能曲線はあくまでポンプ吐き出し口における能力を示しています。ポンプ吐き出し口の能力とはそのポンプが生み出す差圧と送り出している流量の事です。従来のポンプの能力制御はポンプ吐き出し口の後に付けるバルブ開閉による調整が主流でした。
しかしバルブを通過する際にポンプから送り出される圧力は損失しています。これは性能曲線の見方についても同じで、システム抵抗曲線とポンプ性能曲線との交点はあくまでポンプ吐き出し口の能力になります。実際の回路ではバルブ通過後の流量や圧力が重要になってきますので、下図の性能曲線の青い交点つまりポンプ吐き出し口の能力だけを見ても不十分になります。
下記の性能曲線で見るとバルブ通過後の圧力は赤い点になります。バルブで流量を絞るとここまで液体に与えられる圧力は落ちるのです。
このバルブによる失われた圧力損失分が無駄に消費されてしまったエネルギー分と言えます。この無駄に消費されたエネルギーはそのままポンプ消費電力の浪費となります。
バルブ制御が要らないPMポンプという回転数制御
スペックポンプにはPMポンプというVFD駆動タイプのポンプがあります。回転数を1000~4000回転に自由に変える事で幅広い能力をカバーできる省エネにも適したポンプです。幅広い回転数でポンプを運転できるという事はこれまでのようなバルブによる制御が要らなくなるという事でもあります。つまりこれまでのバルブによる圧力損失がPMポンプのような回転数制御のポンプの場合には起きなくなるのです。
下記の曲線はPMポンプの1000~4000回転の曲線を示しています。黄緑色のシステム抵抗曲線との交点は最大能力になる4000回転時には青い点になり、もう少し流量を落としたい場合はバルブを絞る代わりに3000回転まで落とし赤い点にします。この時にはバルブがないためにバルブによる圧力損失は起きていません。
バルブによりエネルギーロスが起きないため、PMポンプの消費電力は常に必要最小に留めておくことが可能になります。
カスケード(渦流タービン)・ 渦巻き マグネットポンプについて
マグネットポンプとはキャン内にある媒体を完全に密閉にし、磁力の力でインペラー部を回転させる事で媒体を輸送するポンプの構造になります。マグネットポンプ構造は更に大きく分けて2つの遠心ポンプである カスケード(渦流タービン)ポンプと 渦巻きポンプに分けることができます。
カスケード(渦流タービン)インペラーについて
スペックポンプのあらゆる特徴はこのカスケード(渦流タービン)インペラーをポンプに採用しているところから始まります。
カスケード(渦流タービン)インペラーは通常、ポンプ業界で呼ばれているポンプである渦巻きインペラーとは異なり、200l/m以下の小流量ながらも高い圧力を出す事に特化したインペラーです。 この高圧力を生み出すことができるカスケード(渦流タービン)インペラーという形がシステム抵抗値の高くなった複雑な水路(回路)にもしっかりと流量を流す事ができる要因になります。
渦巻きインペラーでもインペラーを何枚も重ねる多段型にすれば高圧力を出すことは可能ですが、コストが増すのと故障を起こした際のメンテナンスの手間を考えると最適なソリューションとは言えません。しかしカスケード(渦流タービン)インペラーならば、容積式ポンプと非容積式ポンプの間のようなその特徴により、ある程度の流量を高い圧力で流すことが可能です。
また渦巻きインペラー1枚で何とか希望の稼動点を出そうとしますと、必然的にインペラーサイズとモーターサイズが大きくなり、ポンプが巨大化してしまう難点があります。
”スペックポンプは他社製品よりもコンパクトなのに圧力がしっかり出る”という評価をよく頂きますが、これはカスケードインペラーを採用し高圧力を生み出すために特化したポンプにしているためです。
性能曲線の傾きが強いカスケード(渦流タービン)インペラーは小さいモーターサイズでも高い圧力を出す事ができるのに対して、曲線の傾きがほぼ平行である渦巻ポンプはインペラーサイズを大きくしないと(モーターサイズを大きくしないと)一定の圧力を出すことができません。必然的に渦巻ポンプで稼動点を出したいとなった場合はポンプサイズが大きくなっていきます。