飽和蒸気圧とNPSHR

ポンプのNPSHRを考える際に忘れてはいけない指標が媒体の飽和蒸気圧です。何故ならNPSHRとはポンプがキャビテーション(沸騰)を起こさずに問題なく稼動できるための最低限必要な押し込み圧と言えるので、液体そのものの飽和蒸気圧すなわちその液体が何℃のときに気体になり沸騰してしまうかを見るのは重要なのです。

 

 

地上で私たちは大気圧から0,1MPaの圧力を受けながら暮らしています。ですので40℃くらいの水であるならば上の飽和蒸気圧曲線でも分かるように水は沸騰せずに液体のままでいられます。

しかし徐々に水の温度が上がり100℃まで到達してしまうと水から発せられる蒸気圧0,1MPa(=10m)と大気圧の0.1MPaが均衡してしまい沸騰が始まります。更に温度が上がり150℃ともなれば水から発せられる蒸気圧は0.5MPaにもなり、完全に大気圧の0.1MPaを押しのけて沸騰し蒸気になります。

■水150℃は地上では水蒸気になる

水 150℃時 の 蒸気圧 0.5MPa   >>>>>  地上での大気圧 0.1MPa

 

逆を言えば、150℃の水に0.5MPaの圧力を掛けてあげれば、水の蒸気圧0.5MPaと均衡するので、水の状態にいられます。

ここから媒体を水(液体)の状態に留めておくには、温度を下げるか(冷やすか)、圧力を加圧するかの方法になります。

水蒸気(気体)の状態に留めておくには、温度を上げるか(温めるか)、圧力を下げるかになります。

 

180℃の水を沸騰させないために必要な圧力

スペックのマグネットポンプでこの飽和蒸気圧について考えるのはこちらのCY-6091-MK-HT(高温水180/220℃用マグネットポンプ)です。水は大気圧下(0.1MPa)で100℃で沸騰を始めますが、現在ヨーロッパの自動車メーカーをはじめとして従来の熱媒油ではなく、180℃以上の高温水でプラスチック成型する手法が注目を集めています。その際、180℃時の水の飽和蒸気圧は1.0MPaにも達するため、この圧力と同等以上の圧力を水に対して加圧する必要があります。加圧しなければ水は沸騰してしまうからです。

1.0MPaの圧力をポンプに加圧するという事はそれに耐えうるポンプの耐圧が必要になります。このHTバージョンのマグネットポンプは最大耐圧3.0MPaまで可能な堅牢な高温水に特化した型式です。

 

CY-6091-MK-HT 高温水180℃

 

 

フッ素系媒体(HFE7200・FC3283・Galden)とNPSH

冷媒系チラーに媒体として使用される代表的なものとしてHFE7200・FC3283・Galdenなどがあります。これらのフッ素系媒体はそれぞれ特徴がある媒体であり、例えばその1つに媒体密度が高い(FC3283=1.8 g/cm3   20℃時)があり、あまり高回転でポンプを回し過ぎると、モーター過負荷になる恐れがあるので注意が必要です。

もう1つフッ素系媒体で注意が必要になってくるのは飽和蒸気圧です。

20℃時のそれぞれの飽和蒸気圧

水  0.0025MPa=0.25m

FC3283   0.0013MPa=0.13m

HFE7200    0.016MPa=1.6m

 HFE7200の飽和蒸気圧が少し高くなっています。

 

40℃時のそれぞれの飽和蒸気圧

水  0.01MPa=1m

FC3283   0.00316MPa=0.31m

HFE7200    0.027MPa=2.7m

40℃あたりまで媒体が温まるとそれぞれの蒸気圧が無視できないほど高くなります。キャビテーションを抑えるために装置としての押し込み圧も考える必要があります。

 

液化CO2用ポンプ

現在、冷媒チラーにおいてGWP係数(地球温暖化係数)が重要なトピックになっています。よりGWP係数が小さい冷媒を採用する流れに業界が向かっていますが特に冷媒として液化CO2(GWP係数=1.0)が注目を浴びています。

これはCO2の飽和蒸気圧曲線ですが、水の飽和蒸気圧曲線と随分と違います。ポンプで輸送するには当然、液体の状態にしなければならないのですが、CO2は常温・1.0MPaの大気圧下では水のように液体で存在できず、気体(ガス)の状態になってしまいます。

 

このCO2を大気圧下の1.0MPaで液化するには、―40℃までこのCO2を冷やすか、常温のまま例えば31℃の状態で7.38MPa以上の圧力をCO2に掛けるかです。

このようなCO2ポンプの特徴としては、使用温度帯が-80℃の低温帯まで使用可能なこと。

また液化するにはその低温帯で1.0MPa以上の圧力を出せるポンプという特徴になりそうです。

またポンプ循環中にちょっとした液化CO2の温度上昇で、蒸気圧の曲線上(液体→気体への移動)になるためキャビテーションが起こりやすい状況にあります。ですので極力、NPSHRが低いポンプが条件になるでしょう。NPSHRが高いポンプになってしまうとよほどの高い押し込み圧がなければすぐにキャビテーションを起こしてしまいます。

 

 

 

飽和水蒸気量とポンプの露点温度

体積あたりの空気が含有できる水蒸気量(水蒸気圧)には限りがあります。そしてその含有できる水蒸気量は温度によって変わります。(下図参照)その体積当たりに限界まで水蒸気を含んだ状態のことを飽和状態と言います。

■温度が低くなるほど含有できる水蒸気量は小さい

上記の飽和水蒸気曲線のようにその空気が冷えるほどに含有できる水蒸気の量は小さくなります。

これは下記の曲線からも分かるように、温度が低い時に水の蒸気圧は小さいためです。

水は常に大気に蒸発しようとしますが、温度が低い状態では大気圧下で抑えつけられているために中々蒸発(気化)はできません。

 

ここにその空気が大量の水蒸気を含んでしまう状態になると、蒸発できない水蒸気を空気が含有し切れずに、結露という状態を起こします。

結露は暖かいたくさんの水蒸気を含んだ空気が冷やされると飽和水蒸気量を超えて余分な水蒸気が水に変わる現象です。

 

 

 

■温度が高くなるほど含有できる水蒸気量は大きい

逆に空気が温まるとその空気が含有できる水蒸気量は大きくなります。温度が上がると水の飽和蒸気圧も大きくなるため気化しやすい状態になります。

 

■露点とは

空気の温度が高いうちは全て水蒸気のままでいられるが、この空気の温度が冷えていくと空気が含んでいる水蒸気量が飽和(一杯)になり、水となって溢れ出す。この時の温度をその空気の露点と言う。

①露点は空気が含有する水蒸気量を減らす、つまり空気を乾燥させる事で下げられる。つまり結露しにくくする事ができる。②もしくは断熱材など巻いて、冷たい空気や冷たい液体と空気を接触させないという方法もある。冷たい空気や冷たい水と接触することで、その空気の温度も下がり、飽和水蒸気量が下がっていくためである。

ポンプでもマイナス50℃などの極低温の媒体を循環させる際に、この結露を十分に気をつける必要がある。ポンプケーシング内で外気の20~30℃程度の空気と媒体の-50℃の媒体が触れ合えば、当然に結露は起こりやすい状態になる。結露が起これば、水滴がポンプケーシング内に発生し、様々なトラブルを引き超す可能性があります。

この結露対策としては、2つのアプローチがあります。

①ドライエアーを送り込む(空気自体の水蒸気量を減らす)

ポンプケーシング内にドライエアーを常時送り込むことで空気自体の水蒸気量を減らし、空気温度がいくら下がっても結露を起こさせないというやり方です。

 

密閉型ランタンに付いた結露防止用のドライエアー口

 

 

②断熱材をポンプケーシングに巻く(温度の変化を防ぐ)

ポンプケーシングに断熱材を巻き、外気と極低温になった媒体を接触させないやり方です。結露は暖かい空気が急に冷やされることで発生する現象ですので、そのもとを断ってしまうという方法です。

 

 

■断熱圧縮と断熱膨張

CO2や自然冷媒に近い媒体などは常温時(20℃)では液体の状態ではいられず、気化してしまう媒体です。

現在ではこのような自然冷媒を冷凍チラーに使おうという動きが業界でも活発化しています。

 

しかしチラーで冷媒を循環させるには液体の状態にしなければなりません。

常温でガス化してしまう自然冷媒を液体にするには、①冷却する②加圧するかしかありません。

下の図で言えば、緑色の大気圧という線を加圧して上の方へ持ち上げる、または冷媒自体を冷やす事で赤い飽和蒸気曲線上を左下に移動させる事です。その時に冷媒は気化せずに液体状態になります。

 

しかし①単純に冷媒を加圧だけしても、冷媒の温度が上がってしまい、冷媒は飽和蒸気曲線上の上を右上に移動していくだけで液化させることができません。加圧したならばそれと同時に冷媒を冷却させる事で、冷媒は液体の状態にできます。

上記の①の外界からの熱を遮断して、気体を圧縮することを断熱圧縮と呼び、断熱圧縮すれば気体の温度は上がります。

また外界からの熱を遮断した状態で気体が膨張することを断熱膨張と呼び、断熱膨張をすると気体の温度は下がります。

 

 

 
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